デスクトップ型 データベース・システム
一つのアプリケーションの中に、ユーザ・インタフェースからデータベースアクセスまでのすべての機能を持ち、1台のPC上で動作するものです。
メリット
- アプリケーションは、単体のプログラムとして提供可能なため、インストールやアプリケーションの起動が分かりやすい
- データの往来がすべて1台のPCの内部で行われるため、動作が高速
- 通常のアプリケーションと同様の感覚で、手軽にアプリケーション開発が可能
- ネットワーク越しのアクセスがないため、セキュリティを保ちやすい
- データベースファイルをコピーするだけで、手軽にバックアップを行える
デメリット
- データを、複数のユーザ・複数の端末で共有することができない
コメント
業務用のシステムの場合、事業が拡大するにつれて、個人ではデータを管理しきれなくなる日がいつか訪れます。そのときには、ファイル共有型もしくはクライアント・サーバ型の、マルチユーザシステムにスケールアップする必要があります。けれども、将来的にスケールアップの必要のない個人的なデータ管理用途のシステムには、この形式のアーキテクチャを採用するのが最も自然です。
初めてデータベース・システムを構築する開発者にとって、一番わかりやすいのがこの形式だと思います。データベースを更新すると、データベースファイルの更新日時が変わることが確認でき、わかりやすさでは際立っています。個人向けにも、データベースアプリケーションのニーズはまだまだあるはずであり、デスクトップ・データベースはこれからもますます広い用途で使われつづけるでしょう。
このカテゴリでは代表的製品である「Microsoft Access」が他の製品を圧しており、開発者が自由に利用できるDBMSエンジンはほとんどなかったため、テキストファイルなどの単純なデータベースを使ったり、自前でデータベースアクセス機能を作りこまざるを得なかったのがこれまでの現状でしたが、高性能のDBMSがソフトウェアコンポーネントとして流通すれば、この状況も変わるでしょう。
Access とは何か?
Microsoft Access は、圧倒的に成功した製品です。Microsoft Office Professional
というパッケージに含まれ、WordやExcelとともに広く普及しています。このAccessというソフトウェアの特徴は、以下のように要約できます。
- デスクトップ型と、ファイル共有型の二つのデータベース・アーキテクチャに対応した製品で、
- 多機能で平均的性能のDBMS機能を持つデータベースエンジンを搭載し
- 自由に設計可能なフォーム、高機能のグリッド、それに印刷機能などを持つ、極めて強力なユーザインタフェース機能を備え
- それなりのアプリケーション機能を実装できるVBAという最小限のアプリケーション開発言語を備えている
- 比較的簡単にエンドユーザがアプリケーションおよびデータベースを設計できるアプリケーション
中小規模の企業にとって、データ入力用のフォームを設計する機能や印刷機能は、非常に魅力的な機能です。また、AccessのグリッドとExcelのワークシートの間でデータをCut&Pasteで簡単にやりとりできることも、便利な機能です。Accessが売れるのも無理もないですね。
Accessは決して安くはありあませんが、Word, Excel と合わせてOffice Professional
を購入できる事業者の方は、購入してもよいかも知れません。個人ユーザが「データベースを勉強したい」というだけの理由で購入するには、ちょっと贅沢すぎると思います。
Accessのデメリットは、こんなところでしょうか
- Accessのデータベースエンジンを配布するためには、高価なライセンスを購入しなければならない。(Office Developerか、Visual
Basic Enterprise Editionを購入する必要がある) - アプリケーション機能の実装には、VBAを使わざるを得ず、コンパイルされた専用アプリケーションを開発するには使い勝手が良くない
- スキルのないエンドユーザが、データベースやアプリケーションの設計をいじって、破壊してしまうことが比較的起こりやすく、セキュリティが保ちにくい
結論として、エンドユーザに近い開発者が、簡易的なデータ入力やカスタマイズされた印刷機能を持つ、小じんまりしたデータベース・アプリケーションを構築するためには、なかなかいい環境だといえるでしょう。
想定されるアプリケーションと、実装例
個人事業・小規模事業所向けの、シンプルなデータベースシステム | |
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DBMS | MS-Access |
クライアント | Accessのフォームおよびレポート機能を利用 |
開発環境 | Access VBA |
ライセンスコスト | 6万円ぐらいで、Microsoft Office Professional を購入し、1台のマシンのみで使用 |
システム構築コスト | 事業主が自力で作成、または、数万円~数十万円 |
いわゆるマイクロソフトお勧めのソリューションです。このような規模の事業所においては、事業主=ユーザ=開発者である場合が多いでしょう。そのような場合には、比較的手軽に構築でき、使っていく過程で少しづつカスタマイズしていくことで、使いやすいシステムになるでしょう。
VBAプログラム+Accessオブジェクトの集合体は、保守しにくいものになる恐れがあるため、複雑な機能のアプリケーションには向きません。特に、システムのユーザにプログラミングスキルのない場合は、もてあますかもしれません。もっとも、小規模事業の場合は、複雑な機能をシステム化する必要はあまりなく、むしろ例外的な場合にデータを手動でメンテナンスできることの方が便利なので、あまり問題にならないでしょう。
個人・小規模事業所向けの、シンプルなパッケージ・システム | |
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DBMS | DBISAM |
クライアント | Delphiで作成 |
開発環境 | Borland Delphi |
ライセンスコスト | Delphi Professional が6万円代 + DBISAMが約3万円 |
システム配布コスト | 無料 |
弊社お勧めのソリューションです。DBISAMはDelphiアプリケーションにデータベース機能を付加するコンポーネントであり、開発者ライセンスを購入することで、SQLデータベース機能をビルトインしたアプリケーションを手軽に構築し、無制限に配布することが可能です。(※手前味噌ですが、DBISAMについてはこちらをご覧下さい)
Delphiのデータベースコンポーネントを活用することで、データベース・アプリケーションの構築はかなり楽になります。こうして作成したプログラムが数千円~数万円で売れれば、十分ペイすると思います。我こそはと思うソフトウェア技術者の皆さん、ぜひ挑戦してみませんか?