「紙文書を電子化して、ペーパーレスを実現したい」というテーマで、お問い合わせをくださるお客様はしばしばいらっしゃいます。私たちが「ペーパーレス」というテーマに取り組むやり方を、少しだけご紹介します。
「ペーパーレス化」の目的は?
私たちは、「ペーパーレス化を実現したい」というお客様には、まずその目的をお尋ねしています。
ペーパーレスの最終目的は、おおよそ二つ
一般に、「ペーパーレス化」は手段であって、最終目的は下記の二つの組み合わせがほとんどです。
- 目的1:保管コスト削減のため(電子アーカイブ化)
- 紙文書をスキャナにかけて電子化し、原本を破棄もしくは倉庫送りとすることで、事務所スペース内において文書が占有する容積は確実に減少します。この、容積の減少によって保管コストを減らしたいというのが、まず第一の一般的な目的です
- 目的2:参照/活用のため(データベース化)
- 近い将来に再び参照される文書について、その将来の参照・活用が高速・低コストになるようにします。
- 一般的には、検索の目印となるラベル・キーワードや属性データを付与しておき、キーワードやラベルによる文字列検索や、属性による条件検索を組み合わせて検索できるようにします。
ペーパーレス化プロジェクトの失敗パターン
私たち鉄飛テクノロジーは、ファイルサーバ全文検索エンジンのベンダーです。紙文書のペーパーレス化を機に、検索システムの導入を検討されるお客様から、しばしば声がかるのですが、そもそものペーパーレス化プロジェクトが頓挫してしまうという経験を何度も繰り返して、プロジェクトの成否パターンが見えてきました。
対象文書・目標が絞り込めていないプロジェクトは、失敗します
- 成功するケースでは、たとえば「申込書をPDF化して保管し、将来の問い合わせ時に瞬時に検索できるようにして業務レスポンスを向上させたい(顧客名・契約番号を付与して保管し、検索システムを導入することで実現)。」というように、対象文書と業務上の達成目標(実現イメージまでも)が明確になっています。
- 失敗するケースでは、「本社移転に伴って、書庫の総面積を半減させたい。」というような、漠然とした総量削減が目標として掲げられことがしばしばあります。
- スキャンしてデータ化する文書種類が具体的に何種類か見つかってからであれば、私たちもプロジェクトの実現にお役に立てると思いますが、どんな種類の文書でも同じツールを使ってペーパーレス化すれば全員が納得するというものではありません。
行き過ぎたデータベース化も失敗します
- ペーパーレス化の目的として、「アーカイブ化」「データベース化」の二つがあると紹介しましたが、一般に「データベース化」のほうが、属性データ入力の手間が発生する分、実現コストがかかります。
- データベース化の対象文書の量が大きすぎると、そのコストに圧倒されてしまいます。
- たとえばスキャナで読み取ったファイルのすべてに、日本語タイトルを手入力しようとすると、膨大な手間暇がかかります。片手間仕事では難しいということで、外注をすると、1文字何円という入力役務の費用が塵も積もって山となり、数百万円単位のコストが発生します。
ペーパーレス化プロジェクトを成功させるために!
文書の分類や、文書ライフライクルの分析を怠らない
- たとえば書庫のスペースを減らしたいという場合、まず最初にアーカイブ化したい文書種類の分析を行い、データ化するか・廃棄するか・外部倉庫に追い出すか、といった取り扱い方針を個別の文書種類別に決める必要があります。
- 大量の文書を分類し、その作成~利用~廃棄の文書ライフサイクルに関わる業務プロセスを把握して、文書の適切な取り扱いを決定するという作業は、面倒なものですが、逃げては成功が危うくなるのです。
文書によって異なる目的バランスを意識する
組織が扱う文書の種別は多種多様であり、それぞれの文書ごとに、その文書の運用・保管にかかわる悩みも変わります。アーカイブ化とデータベース化の二つの目的は同時に存在しうるものですが、各文書種類ごとにその組み合わせ・重要性の割合は異なります。
- たとえば、頻繁に参照される文書については、想定される活用シーンのそれぞれにおいて素早く検索可能にするためのデータベース化が重要です。緊密に連絡を取り合う相手の連絡先情報や、最新の製品カタログや提案資料などはこのカテゴリになるでしょう。
- 一方、大量に収集される一次調査資料など、二度と参照されることがなさそうな文書の場合には、保管コスト削減のためのアーカイブ化が重点目標となりますが、データベース化の必要性はほとんどありません。
- 参加した見本市会場やセミナー会場で受け取ったチラシや、アンケートの回答用紙生データなど、念のため保管しておこうかな、というカテゴリの文書類です。
- ごくまれに、ふと以前の資料を見返したくなることもあるでしょう。そういう時には「捨てずに残っている」ことが大切です。稀なケースなので、探し出すために多少苦労しても構いません。
- 両者の中間には、数年~十数年の長い周期をもって、繰り返し参照されるデータも存在します。
- 一定期間満期ごとに発生する契約更新案件や、耐用年数が長い物件に関して発生する保守・サポート案件など、ビジネス上の案件は多くの場合一定の周期をもって発生します。その際、前回の案件にかかわる文書を読み返したくなるでしょう。参照頻度は数年に一度と低いかもしれませんが、瞬時に以前のデータにアクセスできることも重要です。アーカイブ化とデータベース化、二つの目的が同時に共存するケースです。
データベース化の対象は最小限に限定する
データベース化の必要ありと認められる少数の文書については、ある程度の手間をかけ、体制を構築して属性入力をしっかり行うこと重要です。そのような対象文書は、できるだけ最小限に限定することが大切です。
- 対象文書の範囲を十分に絞り込めば、仕事量も現実的になるので、専任の管理担当者を置くことができるでしょう。
- 名刺だけ、申込書だけ、注文書、最終納品物だけ…など、お客様の重要文書は何でしょうか?
- 同じ文書でも、作成時期によって取り扱いを変えてよいことに留意します。
大量に作成される文書をペーパーレス化するという場合、たとえば
「これから作成する文書のみをデータベース化の重点対象とし、過去1年間の文書については簡易的なアーカイブ化の対象とし、それ以前の文書は従来通り紙で保管する」というように、作成時期によって取り扱いを変えることが現実的になる場合があります。過去からの蓄積を含めて全体を一律にデータベース化しようとすると、データベース登録のための工数が爆発的に増大してしまいますが、対象文書を作成時期によって絞り込むことでこの問題を回避できるのです。
アーカイブ化にはとにかく手間をかけない
データベース化の必要性の少ない文書については、手間を最小化する方法でアーカイブ化することが重要です。
- たとえば、1枚づつスキャンするよりも、なるべく厚い束でスキャンしたほうが、ファイル数が減って、作業が楽になります。
- ファイル単位で属性を付与するのは時間の無駄です。なるべく多数のファイルをまとめたフォルダの単位で属性を入力します。
- スキャナやデジカメが自動的に付与するファイル名は、日付時刻や連番になっています。これを意味のある日本語タイトルにリネームしたくなりますが、1ファイル単位でリネームしていては時間が勿体ないので、あえてファイル名は放置してもよいでしょう。
- なるべく多くのファイルを1つのフォルダにまとめ、そのフォルダ名を、わかりやすい日本語名称にリネームすれば、ファイル名を付与する手間は、大幅に削減されます。ファイルをまとめる単位は、日別、イベント別、月別、四半期別などの期間別や、期間に係属するイベント別・案件別などが良いでしょう。
アーカイブ化・データベース化の両目的に対応したシステムを利用する(PR)
現在市場に出回っている「文書管理システム」の多くは、「文書のデータベース化」を主目的とした製品です。そのため、登録するすべての文書について、属性の入力を求めるような設計が一般的です。こうしたシステムは、大量の文書を登録するには大量のデータ入力の手間が必要になるという原理的な問題をかかえており、単純に「アーカイブ化」したい文書のあつかいが苦手です。
近年では、名刺や領収書など、ある種の定型的な書類については、その内容をスキャン後の画像から読み取って、テキスト化・数値化する能力を備えた、名刺管理システムや、経費清算システムが登場し、データベース化につきものの属性入力の手間を大きく削減できるようになりつつありますが、多種多様な文書種別のすべてを扱えるシステムは、未だ実現が困難です。
私たちは、考える汎用的なペーパーレス化システムは、原則としては属性入力を一切求めずに単純に文書をデジタルデータとしてアーカイブ化し、ユーザの必要に応じて任意的に検索用属性を付与することで、検索を高速化するようなシステムであるべきと考えて、自社製品FileBlogを開発しております。